新緑がまぶしい季節になると、私はいつも
「目に見えないものの力」について考えます。
木々は春に芽吹き、やがて青々とした葉を茂らせます。けれど、私たちの目に映っているのは、その一部にすぎません。
本当に木を支えているのは、地中深くに張りめぐらされた根です。
根は目に見えません。しかし、その根があるからこそ、木は大地にしっかりと立ち、風雨に耐え、成長を続けることができます。
人間もまた、同じではないでしょうか。
人生を歩むうえで本当に大切なものは、必ずしも目に見えるものとは限りません。
肩書きや地位、財産や能力も、たしかに大切です。けれど、それ以上に私たちを支えているのは、信頼や安心、そして人とのつながりではないかと思うのです。
私は長年にわたり全国で講演活動を続け、多くの方々と出会ってきました。
その中で、いつも感じることがあります。
人は誰しも、「安心して自分でいられる場所」を求めている、ということです。
認められたい。
理解されたい。
受け入れられたい。
そう願う気持ちは、年齢や立場に関係なく、誰の心の中にもあるのではないでしょうか。
どれほど優れた能力を持っていても、どれほど大きな成果を上げていても、安心できる場所がなければ、心はいつか疲れてしまいます。
反対に、「ここなら大丈夫」と思える場所があれば、人は勇気を持って、新しい一歩を踏み出すことができます。
心理学者ジョン・ボウルビィは、こうした存在を「安全基地(Secure Base)」と呼びました。
その愛着理論によれば、人は安全基地を持つことで未知の世界へ挑み、たとえ失敗しても、再び立ち上がる力を育んでいきます。
興味深いのは、
人が本当に求めているのは「失敗しない人生」ではない、ということです。
求めているのは、
「失敗しても見捨てられない」という安心感なのです。
安定した愛着を持つ人ほど、
ストレスに強く、人間関係や人生の満足度も良好である――心理学では、そうした傾向が数多く報告されています。
つまり人は、安心できる土台があってこそ、本来の力を発揮できるのです。
私は近年、この
「安全基地」という考え方を、ますます大切に感じるようになりました。
なぜなら現代は、便利になった一方で、人と人との信頼が揺らぎやすい時代でもあるからです。
SNSを通じて、私たちは簡単につながれるようになりました。
けれど、その手軽さの裏で、比較や批判もまた生まれやすくなっています。
正しさを主張する声は増えました。一方で、相手の立場に耳を傾ける機会は、むしろ少なくなっているようにも感じます。
だからこそ今、私たちには、安心して本音を語り合える場所が必要なのではないでしょうか。
シンクロニシティ研究会では、かねてより
「違いを認め合うこと」の大切さをお伝えしてきました。
マヤ暦を学ぶ意味もまた、自分と他者の違いを知り、その違いを尊重することにあります。
人は、一人ひとり違います。
価値観も違う。
考え方も違う。
歩んできた人生も違う。
だからこそ、
自分の正しさを押しつけるのではなく、
相手の違いを認めることが大切なのだと思います。
違いがあるからこそ、学びが生まれます。
違いがあるからこそ、成長があります。
違いがあるからこそ、コミュニティは豊かに育っていくのです。
ただ、安全基地とは、単に「優しい場所」のことではないと、私は考えています。
本当の安全基地には、
信頼があります。
そして信頼は、
互いを尊重し、
約束を守ることによって育まれます。
そのためには、一定のルールも必要です。
ルールとは、人を縛るためのものではありません。
安心して学び、交流するための土台です。
互いが気持ちよく過ごせるように配慮し合うこと。
相手の違いを認めること。
そして、約束を大切にすること。
そうした積み重ねが信頼を生み、信頼が安全基地を育てていくのだと思います。
私は、シンクロニシティ研究会そのものが、そのような安全基地でありたいと願っています。
ここに来れば、安心できる。
ここに来れば、自分らしくいられる。
ここに来れば、仲間がいる。
そんな場所でありたいと思っています。
私が目指しているのは、
「絶対的な正しさ」を掲げるコミュニティではありません。
正しさは、人それぞれ異なります。
けれど、「絶対的な信頼」を育むことは、きっとできます。
誠実であること。
感謝を忘れないこと。
約束を守ること。
そして、互いを尊重すること。
その
積み重ねが、
揺るぎない信頼を生み出していくのだと思います。
人生には、順調なときもあれば、思うようにいかないときもあります。
迷うこともある。
傷つくこともある。
立ち止まることもある。
それでも、どんなときにも
安心して戻れる場所があるなら、
人はまた前を向くことができます。
私たちはこれからも、「見えないつながり」を大切にしながら、一人ひとりが安心して自分らしく生きられる社会を目指して、歩み続けてまいります。
この場所が皆さまにとって、心安らぐ安全基地となり、新たな一歩を踏み出す力となることを、心より願っています。
越川 宗亮